鹿児島第一中学校
南結衣さん
お母さんの家事負担を減らそうと取り組んでみた
ハッピーシェアボード
鹿児島第一中学校 南結衣さんは、お母さんの家事負担を減らしたいという思いから家事・育児の分担を可視化する取り組み、ハッピーシェアボードを実践。「家族がみなハッピーに」という作品でSDGs探究AWARDS2021(以下、アワード)審査員特別賞を受賞されました。作品は、生活していく上で必要な「家事」に着目。それを見える化し、家族と話し合い、実行に移す、まさに「身近なことからやってみた」という点が評価されました。今回は、南結衣さんご本人にハッピーシェアボードへの取り組みの動機や、現在の様子、今後の目標についてお伺いしました。
社会科の授業の中で挑戦したアワードへのエントリー
―アワードにエントリーしたきっかけを教えてください。
大迫先生「元々、本校では4年程前からSDGsのカードゲームを実施したり、中学3年生の社会科の授業の中で週に何コマか割いてSDGsについて調べるなど、授業の中にSDGsを取り入れていました。一昨年までは、調べたことを校内で発表していたんですが、昨年たまたまSDGsアワードのチラシを見つけまして、せっかくだからエントリーさせていただこうと思い参加させていただきました。」
―授業の中での取り組みだったんですね。
授業では、どのようにエントリーまで進められたのでしょうか。
大迫先生「まず、SDGsの17項目について知ってもらいました。そして、その中から自分が興味を持った項目を選んでもらいました。生徒たちは、週に1回パソコンを使って調べながらそれを形にしていきました。何を検索に入れたらいいか分からないという生徒もいたので、思った疑問をそのまま打ちこんだら、意外と答えに引っかかったりするよ。そこから芋づる式に次の疑問が沸いてくるだろうから、どんどん辿っていったらいいよというアドバイスをしながら、進めていきました。発表形式が自由だったので、本当に皆、さまざまな形でエントリーを行い、南さんはレポートでしたが、パワーポイントの子や、オリジナルカルタを作った子、ポスターや新聞にまとめた子もいれば、小説にした生徒もいました。」
南さん「私もWEBサイトで調べていったんですが、1つのものを見て、それを信じるよりは多角的に色んなものを見たほうが良いと言われたので、1つのキーワードに対して5,6個のWEBサイトは調べて回りました。たくさんの情報の中から、「これはいいかも」と自分で思ったものをピックアップしていきました。作品は、自分が一番納得出来る内容で書こうと思っていましたので、そのようにさせていただきました。」
身近な問題「家事」に着目し、家庭内で実際に取り組んだ
ハッピーシェアボード
―作品づくりの中で「ジェンダー、平等を実現しよう」というテーマを選んだ理由をお聞かせください。
南さん「元々ジェンダーについて興味があって。心の性と社会の性が違う人たちの悩みを本や雑誌で目にしたりしていたので。そこから、5番の目標である「ジェンダー」を選びました。心と体の性が違う人、LGBTQの問題を軸にしてまとめようとしたんですけど、どうしても個人の問題というか、すごく踏み込みにくい部分もあって、今回は自分と関わりが持てる身近な所から始めようと思いました。問題を調べていく中で、世界規模の問題など色々と出てきたのですが、私が気になったのが、家事の分担についてでした。」
―普段から、家事への興味はあったんですか?
南さん「そうですね。母は普段から家事全般が好きで、楽しそうにしていたので「母が楽しそうにやっていることを、やってみようかな」という想いは昔からありました。また、私自身が大人になるにつれて、「大変そうだな、助けたいな」という想いもあって、このテーマを選びました。そして、家事負担の偏りや意識についての解決策や糸口は何だろうと、調べていく中で辿り着いたのが、家事・育児の分担を可視化するハッピーシェアボードでした。ハッピーシェアボードを取り寄せて、そのまま使いたいなと思ったのですが、もう販売は終了していたので、アイデアをお借りして自分で作って、家庭内で実際にやってみることにしました。」
―今回、家庭でハッピーシェアボードを取り入れたことや、発表を通して、周囲の変化や自分の変化など、何か感じたことはありましたか?
南さん「母とこれを機に改めて話したことで、以前私が見えてなかった大変な部分や、こんなことも毎日してくれているんだという感謝の想いが、増えました。そして、もし自分が独り立ちして成人し、結婚した時にも同じことをしないといけなくなるので、自分の将来の為にも、そういった力を身に付けたいなと思いました。負担に思っている部分も個人個人で違うので、そういった所を発展させても面白いかなと思いました。今でもハッピーシェアボードは続けています。母は、ハッピーシェアボードを実践することで、助かったり、時間短縮にもなるので嬉しいと言っています。「これお願い。」と母が言ってくれるようになったので、ハッピーシェアボードがコミュニケーションのきっかけにもなっています。」
―ハッピーシェアボードを今でも継続しているんですね。
では、アワードへのエントリーを通じて新たに気づいたことや、学んだことは何ですか?
南さん「SDGsの問題を調べるまでは、何で問題が解決出来ないんだろう?という想いが強くありました。ただ、実際に調べていく中で、問題は予想していたよりも、大きなものということが分かりました。それは、何か大きな働きかけがあって解決するものではなく、ジェンダーの問題や、それ以外でも、個人の積み重ねが大事だということに気が付きました。だから、SDGsクラブに入り、海岸の清掃をしたり、ワークショップに参加したり、本当に少しの事ですが、出来るならやってみようと思いました。」
現状を知った上で、行動に起こす。
生徒達が自ら立ち上げた「SDGsクラブ」
―SDGsクラブについてお聞かせください。
大迫先生「本校は中高一貫校なので、SDGsクラブは中学でSDGsを学んだ生徒たちが、高校生になって立ち上げたクラブです。授業でSDGsとは何かを知ったことで、今まで目に入らなかったようなことが、目に入るようになったんだと思います。調べて初めて分かるんですね。南さんの発表はまさしくそうだったんですけど、現状を知った上で、じゃあ、自分には何が出来るんだろう、と直接解決にならなくても、そこまで考えてくれる子が出てきて良かったなと思います。それがSDGsクラブにも繋がって、思った以上のことを子供たちがしてくれました。」
南さん「私も、このアワードで作品づくりをしたのがきかっけでクラブに参加することにしました。これからも皆で1つになって何か行動を起こしていきたいね!ということで、私達の学年では多くの人がクラブに入りました。全員で20人くらいなんですが、十何人かは私達の学年です。クラブの活動としては、休日に集まって海岸清掃したり、イベントに参加したりしています。活動頻度は結構増えてきています。クラブでは、2,3個のグループに分かれてプロジェクトを行っています。例えば鹿児島は桜島があり、火山灰が容易に手に入るので、灰の活用例を模索するプロジェクトでは「火山灰アート」というものを広める取り組みをしています。つい先日そのアーティストの方をお招きし、ショッピングモールなどで一般の方も参加できるワークショップを開催しました。また、先ほど、話に出ていましたSDGsカルタの出前授業もしようかと、その準備も進めています。」
―ちょっと先の話になるのですが、将来就きたい仕事などあれば、お聞かせいただけますか?
南さん「実は私は≪教育≫に興味があります。日本で出来ていることでも、海外ではままならないことがある中で、課題解決に向けて自分に出来ることがあればと思っています。元々、将来の夢が教育関係の仕事をすることで。私は学校の先生や塾の先生に本当にお世話になり、一番身近な憧れる人だったので、遠くの国にも、こういう尊敬できる、いい影響を与えられる先生を増やしていければと思っています。」
取材を終えて
今回、大迫先生と南さんのお2人に取材のご協力をいただきました。南さんの言葉に耳を傾けながら、サポートされる大迫先生。お2人の信頼関係を伺える機会となりました。また、アワードで取り組んだハッピーシェアボードを今でも継続し、何か自分に出来ることを少しでもしたいという思いで積極的にSDGsクラブの活動に参加する南さんに、とても強い意志と行動力を感じ、感銘を受けました。世界の教育問題に興味を持ち、日本のいい所をどのようにしたら諸外国に活かせるのかこれから探究を始めると語る彼女は、尊敬する大迫先生のように、教育関係の仕事を目指しているとのこと。さらなる南さんのご活躍を祈念しております。