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SDGs探究AWARDS2022開催決定!

千葉県立船橋芝山高等学校
ころプロ
身近な疑問の探究が学校を変えるきっかけに

千葉県立船橋芝山高等学校の有志グループ「ころプロ」の皆さんは「気象データから見る衣替え~気候変動に伴った校則の改善を~」という作品で、SDGs探究AWARDS2020(以下、アワード) 中高生部門・優秀賞を受賞されました。「まだ暑いのになぜブレザー着ないといけないのか?」身近な違和感から始まった研究は、気候変動という地球規模のテーマや、学校教育でも問題となっている校則にも斬りこむユニークな着眼点が高く評価されました。約2年間に渡って取り組んできた研究に対する想いを、千葉 日南音さん・石井 美咲さん・久保田 香帆さん・中尾 七海さん(参加時2年生)、指導にあたられた上野 剛史先生にお伺いしました。

千葉県立船橋芝山高等学校 ころプロ

学校生活で感じる違和感から始まった探究活動

―SDGs探究AWARDSを知ったきっかけを教えてください

上野先生「私は地理の授業担当をしていて、毎年の有志のメンバーを募り、授業外で研究活動をしています。その活動を外に発信できる場を探していて、いろいろと検索をしていたところ巡り会えました。発表の場を多く持つために、高校生を対象とした県の発表大会や大学が主催する発表会にも参加しました。プレゼンテーション形式や論文形式など、表現方法を少しずつ変えながらブラッシュアップを行い、SDGs探究AWARDSに応募したという形ですね。」

―ころプロの探究活動はどのように始まったのですか?

千葉さん「まだ暑いのにブレザーを着ないといけないとか、そういうルールがおかしいなと思って始めたのがきっかけです。学校開設時から衣替えの時期が変わってないのはおかしいんじゃないかって。1年生の時に同じクラスだった4人で始めて、2年生からはクラスはバラバラだったんですけど、放課後に集まって活動を続けていきました。」

上野先生「最初は雑談から始まりまして、テーマが絞れるまでにたくさん対話をしました。授業の延長でもあったので学問としては地理に繋がるものが良いのではないかなと。それから地理学会ではアウトリーチ活動といって親しみやすい形で知識を普及するというのが謳われているので、できれば生活に密着したものが良いという話をする中で、ちょうど10月の頭くらいに日中の最高気温が30℃を超えるというニュースがありました。それで生徒たちが自分たちの疑問であった衣替えの時期の問題と結びつけていったんです。」

千葉県立船橋芝山高等学校 ころプロ

仮説を裏付けるために行った膨大なデータ分析で
チームワークとICTスキルが自然と向上

―研究を進める中で大変だったことを教えてください

千葉さん「気温変化を調べるためにアメダスの観測データを調べることにしました。郊外と超郊外と呼ばれる都市化していない場所で、かつ船橋に比較的近い所とを比較することにしました。アメダスは駐車場などの近くにあるとコンクリートに熱が集まって本当の数値よりも気温が高くなる可能性があるので、正確な数値が取れなかったりするんです。なのでアメダスの設置場所をきちんと確認する必要があって、それをグーグルマップで調べるのが大変でした。」

久保田さん「アメダスの細かい住所は公開されていないので、どこにあるのか全くわからない状態からストリートビューを延々とクリックして探しました。なぜ佐倉と龍ケ崎にしたかと言うと、本当はもっと船橋から近い場所が良かったんです。でも周りを全部調べたら観測場所が良くないということがわかって、他県になっちゃうけど佐倉と龍ケ崎を調査の対象にしました。この写真はアメダスを見つけたとき嬉しくて千葉さんとハグしている写真です。」

千葉県立船橋芝山高等学校 ころプロ
千葉県立船橋芝山高等学校 ころプロ

石井さん「気象庁のホームページからデータをエクセルに移して、そこから月毎や都市毎に並べ替えて平均化したりしながらグラフを作りました。40年間分のデータがあったので、ずっとダウンロード・グラフ化・修正、この繰り返しでした。グラフではどの線も同じだと分かりづらいので、点線にしたり色を細かく変えたり、線の色を気温が高くなるにつれて暖かく感じられるものにするといった工夫をしました。」

中尾さん「グラフを複数のスライドにわたって表示する時にズレがまったくないようにスイッチさせたかったんです。パワーポイントに載せる時とエクセルでグラフを作る時にまったくズレないように、文字を揃えたり位置を揃えたりするのが大変でした。」

―地道な作業を続けていったんですね。スキル面の成長も大きかったのではないでしょうか

上野先生「気象庁のデータはいついつの最高・最低気温、平均気温などが膨大に並んでいるだけで、グラフにするには加工して整える必要があります。よって目的に見合った項目は自分たちで選ぶしかないのですが、私が口を挟まなくても生徒たち自身で考えてできた事もたくさんありました。エクセルなどの操作は4人でカバーし合いながら身につけていましたし、いちいち聞かずにちょっとやってみようとトライしていて、パソコンのスキル自体も上がっていったと思います。自宅で作業をするときにはLINEグループでファイルの送受信などをしていて、これは後にコロナ禍になった時にかなり役に立ったというか、ICT関係のスキルも自ずと身についたと思います。」

千葉県立船橋芝山高等学校 ころプロ

もっと知りたい、深く考えたい
自分たちで考え行動することが生徒の成長に

―指導する上で意識していたこと、日々どのように携わっていたかを教えてください

上野先生「できるだけ生徒ができることは生徒にやらせたいんです。この分析をしたらこういう結果が出るかなというのを予想できることもあるんですけど、答えを言わないように、生徒たち自身で辿り着けるようにアシストするというスタンスです。それから視点を変えてたくさん投げかけてみる。例えば月毎のグラフが出来上がったら、他の年はどうかとか、最高気温が観測される時間帯を調べてみるとか。中には私も答えを知らない問いもあるので、『これどうなっているか教えて』っていう感じで同じ目線に立つこともしています。多角的に調べてみるというのは生徒同士でも上手にやっていたと思いますね。役割分担に捕らわれずに4人の中でよくコミュニケーションが取れていました。最終的には学問的にもとてもレベルの高い会話になりましたし、表現方法などについても一緒に勉強することができたかなって感じています。そして、世界で自分たちしかやってない研究にするんだ、という意識を持ってもらえるように特に注意していました。そのためには研究に対して深い知識も必要だと思うので、私もそれなりに勉強しないといけないなと思っています。」

―この研究を通じて学んだこと、成長したと感じることを教えてください

千葉さん「発表するということに恥ずかしさがあったんですけど、こうやって何度も発表していくうちに、やってみることが大事なんだなって。勇気を持てるようになりました。それからこの研究を発表してから、衣替えの移行期間が2週間から1カ月間に変わったんです。もし私たちの研究が移行期間変更のきっかけになったのであれば、なおさら研究して良かったな、外に発信して良かったなって思います。」

久保田さん「この活動を始めるきっかけになったのが『どうしてだろう』という気持ちです。いろんなことに疑問を持つということがすごく大事なんだって学びました。どうしてこういう結果が出るんだろうって考えていくうちに、どんどん研究が深まって良いものになっていったと思います。」

―この研究を通じてSDGsに対する意識は変わりましたか

石井さん「この研究を進める中で、どうしてそのSDGsの目標が立ったのか、それをどう解決していくか、その課題が『あるんだな』って知るだけじゃなくて、それを深く考えていくことが大切だなと思いました。」

中尾さん「SDGsについて日本は達成している項目が結構多いっていうのを知りました。でもその項目を細かく見てみると、まだ改善できるんじゃないかって思う部分もあります。達成しているから違う所に目を向けるということじゃなくて、達成していてもまだまだできることがあるんじゃないかって感じました。」

―生徒のみなさんのこれからの成長にどのような期待をお持ちですか

上野先生「学問的な力以上にプロセスの部分でだいぶ大きくなったなと思います。知識の量だけではなくて、どうやって問題を解決していくか、これからの学習に求められるのってそういうところなのかなと思います。これを探究学習のサイクルでよく出てくる螺旋階段みたいに表したものがありますよね、それを上手に登っていくように成長できればと感じます。発表した論文は出来上がったものなので、途中の部分は見えないですよね。その見えない部分でどれだけ自分が成長しているか、もっと生徒たち自身が上手に伝えられるようになると良いなと思います。この生徒たちの活動は誰かと同じではない、素晴らしいものになったと思うんですよ。それを表現する力を引き出していきたいです。」

取材を終えて

美しく整えられた論文・図表の裏にある、たくさんの努力と工夫を教えてくれた生徒の皆さん。今後は衣替えに関する全国的な事例や歴史の調査もしてみたい、と更なる意気込みもお話してくれました。そして、生徒の皆さんが自らの言葉でお話できるようにサポートされる上野先生のお声かけも印象的で、生徒・先生のチームワークの良さが伺える取材となりました。これから進学を控える生徒の皆さんにとって、自信に繋がる、かけがえのない活動をされたことと改めて感じるとともに、SDGs探究AWARDSがたくさんの生徒・学生の方にとってそのような機会をご提供できる場になればと思います。

千葉県立船橋芝山高等学校 ころプロ

千葉県立船橋芝山高等学校 受賞作品