SDGs探究Library

山形県立村山産業高等学校
機械科(工業部機械班)
社会課題に目を向け、
人の役に立つ「ものづくり」に取り組む

山形県立村山産業高等学校の機械科による部活動・工業部機械班の皆さんは「工業生の足踏み式消毒スタンド大作戦!!~新型コロナと戦う武器を広めたい~」という作品で、SDGs探究AWARDS2020(以下、アワード) 中高生部門・最優秀賞を受賞されました。費用をかけずに手に入れやすい物で、誰でも作れる消毒スタンド。そしてその作り方を広める循環型社会を意識した取り組みが評価されています。今回は部活動を指導されている槇智夫先生に、部活動での取り組みやアワード受賞後の生徒の皆さんの様子、環境の変化や今後の目標についてお話をうかがいました。

山形県立村山産業高等学校 機械科(工業部機械班)

自信と自覚を持てるようになったSDGs探究AWARDS

―アワードにエントリーしたきっかけを教えてください

部活動のメインの活動としているロボコンが10月に終わって、次に何をしようかなと11月から始めたのが消毒スタンドの製作でした。その過程で、どうにかして生徒たちのこれまで成果をたくさんの人に見てもらいたいと思ったのと、生徒たちに人前で話をさせる経験も積ませたいという想いがありました。作って終わりというのが特に機械科みたいな学科だと多いということもあったので。アワードの公式サイトを見て、この内容だったらうちの学校でやってきたことも応募できるんじゃないかなと思ったんです。

―作品の中にある消毒スタンドは作り方も公開されていますね、どのような想いから?

他の高校でフェイスシールドの作り方や3Dデータを公開しているところもあって、消毒スタンドの作り方も公開したら面白いんじゃない?と生徒からの発案で始まりました。実は最初はマニュアル作成も考えていなかったんです。でもホームセンターなどで買えるもので、特に追加工しなくても作れるのであれば、作り方を公開すれば誰でも手軽に作れるし、そして作った人がまた公開していくことで、さらに輪が広がると思いました。さらにその途中でここはこうした方が良いっていうカスタマイズがあっても面白いですし、インターネットの世界、知らない世界でどんどん活動が広がっていくじゃないですか。私たちは、その種をまいたというか、そんなにお金を出さなくても最低限の動きをするものは自分たちで作れるということを発信してみよう、と取り組みました。

―受賞を聞いた時の生徒の皆さんの反応はどうでしたか?

最初は「えっ、自分たちで良いんですか?」という感じだったんです。参加できれば良いかなぐらいの気持ちだったので。それが最優秀賞を頂けたので生徒たちはまず驚いていましたね。それから少しずつ実感が湧いてきて。どちらかと言うと内向的な性格の生徒が多いのですが、嬉しさを共有するのと同時にもっと自分に自信を持って良いんじゃない?っていう話をしました。職業高校なので3年生になったら就職試験といったこともありますけれど、そういう場面でひとつの強みとしてアピールできたら良いかなと思います。

―活動や生徒の皆さんに変化を感じますか?

これまでも授業の中でSDGsについて習ってはいましたが、リアルに生活に繋がっているかというと、そうでもない雰囲気だったんですね。この部活動でのロボコン参加、消毒スタンド製作やその寄贈、それが全てSDGsに繋がっていくという認識を持つようになって、そして結果として最優秀賞を頂いて、やっぱり努力してきたものが実るんだという成功体験が自信に繋がっていると感じます。生徒の何気ない会話からも「これSDGsのゴールの〇〇に繋がるよね」とか、そういう言葉が聞こえるようになったんですよ。また、機械科というのもあって危険な作業も多々あるのですが、そうした作業でも去年と比べると、生徒同士で注意し合いながら、お互いをちゃんと見るという雰囲気を感じます。物事に対して自分ならどうするかという視点で見られるようになったというか、いままでは「誰かがやるだろう」みたいなところがあったんですけど、自ら取り組むようになってきたという変化も見えますね。

  • 山形県立村山産業高等学校 活動中の様子(旋盤)
  • 山形県立村山産業高等学校 活動中の様子(溶接)

チャレンジする気持ちを大事に、人の役に立つものづくりを目指して

―ものづくりを指導される上で心がけていることはありますか?

まずは安全ですね。作業を行う上で安全が一番なのでそこだけは譲れないです。その次としては、まず失敗しても良いからやってみようってよく声をかけますね。失敗しても、なぜ失敗したか、どうすれば失敗しないかっていうのをまた考えさせることができる。それに0から1にするのは難しいけど、1から2、3にするのは比較的簡単なので、まずはとにかく原案を作ってみようとも伝えています。さらに、生徒たちの得意なことややりたいことを大事にしたいと考えています。機械科だからといって全員ものづくりに興味がある生徒ばかりではありません。最初はみんな一律にやらせてみたりはしたんですけど、この生徒は細かい作業が得意なんだなとか、この生徒は機械を使った作業は苦手だけど、人に説明するのは上手だなとか。そういった生徒には『もっと上手くなろう』って強いるのではなく、じゃあプレゼンテーションを担当してみようか、みたいにそれぞれ得意とする部分を任せるようにしています。

山形県立村山産業高等学校 活動中の様子(指導中)

―どんなことに取り組むか、生徒がテーマを設定するにあたって槇先生はどのような指導をされていますか?

まず作ってみるというやり方ではありますが、ただ物を作ってもしょうがないというか、機械科ですから見た目の綺麗さだけで作るのではなくて、人の役に立つという視点で、身近な課題を見つけてそれを解決していくということがベースにはあります。そういう時に原点に立ち返って、SDGsの17個のゴールを見て、自分の生活と照らし合わせてみる。去年はそうやって、消毒スタンドを作ってみたいですという案が生徒から出ました。実際に何をやるかというのは作業的に実現可能かどうかを見ないといけないので私が最終の判断をしますが、基本的には生徒から出てきた案を、生徒たち自身に議論させて最終案まで決めさせます。

部活動から学校全体の認知度アップを
地域の生徒を大切に育てる場所であり続けたい

―学校の中でどのようにSDGsに取り組まれていますか?

世界や地域の課題があって、それを解決するためにどういう力が必要か、学校では学びの動機と言いますか、そのような位置づけです。こういう力を身に着けるためにこの勉強をしようとか、正直な話、このアワード受賞がきっかけとなって、SDGsにより着目するようになった部分はあると思います。今年(令和3年度)の学校経営のテーマが、「学びと社会がリアルにつながる~村産だからできるSDGsへの挑戦~」と設定しているんです。私たちの活動が少しは学校に貢献できた、影響を与えられたかなと思います。いままでSDGsという位置づけじゃなくても関連する活動はしてきましたが、キーワードとしてよく使い始めたのは受賞後だと思います。

―部活動から学校全体へ、活動が広がっていきますね。この1年の歩みを教えてください

発表した作品の他にも様々なコンセプトで消毒スタンドを作りました。たとえば、子供の顔にアルコール消毒液がかかるというニュースを生徒が見つけて、100円ショップの商品のみで子供用のものを作ったり、高さを下げたスタンドがついた親子スタンドを作ったりしました。またアルコールアレルギーの人にも配慮して、二種類の消毒液を選べるようにした消毒スタンドも製作し、誰もが安心して使える消毒スタンドを製作しました。10月の文化祭では、消毒スタンドをハロウィン仕様に装飾して、みなさんに楽しんで消毒をしてもらいました。

  • 山形県立村山産業高等学校 消毒スタンド 親子スタンド
  • 山形県立村山産業高等学校 消毒スタンド ハロウィン仕様
  • 山形県立村山産業高等学校 消毒スタンド アレルギー対応仕様

また、受賞のことを山形新聞の145周年記念企画「ACT FOR 2030 私たちとSDGs」という記事に掲載してもらうなど様々なメディアで取り上げていただいたことがきっかけで、私たちの活動をいろいろな場で紹介いただける機会をいただいています。例えば山形産業科学館という山形の産業を子供たちに実際に体験してもらおうという施設に、アワード受賞作品についてパネル展示してくださるということで、プレゼンテーションと消毒スタンドの寄贈をしてきました。この科学館は子供もいっぱい来るので、「親子で使える消毒スタンド」と「コンテナを使用した消毒スタンド」を寄贈してきました。また、12月からオンラインで開催される「ものづくりフェスタin山形2021」の、ものづくり体験コーナーにも出展します。「コンテナを使用した消毒スタンド」の製作動画をオンライン上に公開し、動画を見て希望する小中学生に体験キット(材料)を無料送付するという企画です。

山形県立村山産業高等学校 機械科(工業部機械班) 集合写真

また消毒スタンド以外のものも生徒たちのアイディアで取り組んでいます。例えば校内の水道なんですけど、蛇口が三角形のものしかなくて、それをユニバーサルデザインにできないかと。そういう商品は売ってはいるんですけど、自分たちで製作しても面白いんじゃないかって考えていろいろ工夫をしています。

そしてこの4月から部活の名前を「工業部機械班」から「機械探究部」に変えました。探究活動をメインにしていこうということでこの名前にし、更なる探究活動を進めていきたいと考えています。

最後になりますが、今年のロボコン(やまがた高校生ロボットコンテスト)は優勝出来ました。自動車のリサイクル部品を使用してロボットを製作し、ゴミに見立てたアイテムを回収し、ゴミ箱に入れるというロボコンです。昨年よりもルールが難しくなりましたが、予選決勝ともに満点で完全優勝することが出来ました。これもアワードで自信を付けた生徒たちが主体的にロボットを製作してくれたからだと思います。

山形県立村山産業高等学校 機械科(工業部機械班) やまがた高校生ロボットコンテスト

―積極的に活動を発信されていますね。今後の活動目標を教えてください

うちの学校は工業科の他に農業科と商業科もあるので、他の学科と手を組んで全く新しいことをやるっていうのも面白いかなと考えています。学校全体で盛り上げていきたいですね。私としては今回の結果が入学希望者の増加に繋がれば良いなと思っているんです。中学生が私たちの活動を見て「村山産業高校で学びたい」と来てくれれば嬉しいですね。また今いる生徒には「村産で学んで良かった」という愛校心を持ってもらえたら良いなと思っています。あくまで部活動という一面ですが、生徒たちをそのように導けたら良いなと思いますね。

取材を終えて

社会への意識や生徒たちの自信を育みながら多方面へ活躍の幅を広げている工業部機械班(機械探究部)。生徒の皆さん、先生ご自身も楽しみながら取り組まれている様子が印象的でした。槇先生に今後の製作の構想をお聞きすると「個人的に作ってみたいのは全自動の料理製作機です。文化祭の模擬店で、自動でホットケーキなんかを焼く機械があれば面白そう。」と機械科と高等学校の特性を組み合わせた楽しいアイディアを教えてくださいました。これからも工業部機械班(機械探究部)ならではの「人の役に立つものづくり」に、アワードを通して出会えればと願っております。

山形県立村山産業高等学校 受賞作品