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SDGs探究AWARDS2024

東京学芸大学附属国際中等教育学校
植竹スミさん
英語を学びながら、親子のコミュニケーションの機会を創出しようと制作した英会話ブック

東京学芸大学附属国際中等教育学校の植竹スミさんは、親子でのコミュニケーションを楽しみながら、子ども達に英語を学ぶ機会を作りたいという想いで「One, Two, Three, English! おうちでできる英会話ブック」という作品を制作。SDGs探究AWARDS2023(以下、アワード)中高生部門 優秀賞を受賞されました。ワークブックは4歳~6歳の子どもと保護者を対象に、英語を繰り返し聴き、声に出すことで「使える英語」を身につけること、それらのワークを通して親子がコミュニケーションを取ることの2点を目的に作られました。実際にイラストや詩の作成など全ての作業を1人で行いワークブックを完成させた彼女の実行力や、探究心。そして、次世代の子ども達により活躍できる人材になって欲しいという高い志などが評価されました。今回は、植竹スミさん(アワード参加時、高校2年生)に、英会話ブック制作の動機や、作品への想い、今後の展望についてお伺いしました。

東京学芸大学附属国際中等教育学校 植竹スミさん

学校での探究活動がきっかけで感じた「教育の面白さ」

―英会話ブック制作のきっかけについて教えてください

植竹さん「私が通う学校は中高一貫校で、中学3年生から高校1年生にかけて取り組む探究活動があります。ちょうどプロジェクトのテーマを考えていた頃、母が運営する学習塾の手伝いや、保育園でのボランティアで、子ども達が勉強する姿を見て『教育って面白いな』『もっと子ども達が将来活躍できる人材になって欲しいな』と純粋に思い、英会話ブック制作のアイデアに辿り着きました。」

―どういった所に教育の面白さを感じられたのでしょうか

植竹さん「母の運営する学習塾には、幼児から高校生までが通っているのですが、私は子ども達が勉強で分からない所を教えたり、宿題の採点や、音読を聞いたりしていました。私が特に教育に面白さを感じるのは、例えば漢字が書けるようになるとか、そういう技術的なことだけではなく、分からない問題にぶつかった時に、その問題と向き合って解決できた時、心の成長が見られることです。つまり、困難にぶつかった時に、あきらめない心の強さを養っていくことができるのです。また、学校などの他者がたくさんいる場においては、集団の中でどうやって過ごしていくべきなのか、どのように自分のアイデンティティを見つけていけばいいのか。そういった力を身につけていくことができるのが、教育の面白さだと思います。」

英会話ブック作成の様子

「広い世界を見るための切符を多くの人に掴んで欲しい」という想いで制作した英会話ブック

―ワークブックでは、英語とコミュニケーションという2つの能力に注目していますが、その理由を教えていただけますか

植竹さん「私の周りには英語圏で育った人が多く、そういった人達が、英語も日本語も高いレベルで話すことができ、また話している内容もとても高度なものだったので、『どうしてだろう?』と考えていくうちに、小さい頃から多様な環境で育ってきたことが要因なのかなと思いました。皆がそういった環境で育つことは難しいですが、将来的に広い世界を見るための切符を掴むことができたら、子ども達は社会でより活躍できる人材になるのかなと考えました。世界に羽ばたくためには、共通の言語である英語、そして何よりさまざまな人と関わっていくためのコミュニケーション能力が不可欠だと考え、そこに重点を置いたワークブックを作りました。」

―特に親子のコミュニケーションに重点を置いている理由を教えてください

植竹さん「いくつかの保育園や長年学習塾に携わっている方から、子どもが最初に影響を受けるのは親からだということを聞きました。塾や学校の勉強も大切だけど親とのコミュニケーションが子どもに与える影響はかなり大きいのだなと、その時に改めて感じたのが理由です。親子のコミュニケーションが円滑に取れていることが、学習能力だけではなく、思考力やコミュニケーション能力といった非認知能力を伸ばし、心の成長にも良い影響を及ぼすのだなと。この英会話ブックを通して親子のコミュニケーションの場を増やすことができればいいなと思いました。」

―作品を作っていく過程で、苦労したこと・楽しかったことをお聞かせください

植竹さん「苦労したことはいくつかありますが、何よりも内容が本当に子ども達にとって良いものなのかどうかを考えるのに苦労しました。自分自身が専門家ではないし、大学で研究したわけでもないので、このワークブックを本当に子ども達に届けていいのかなと悩みました。ただ、実際に英会話ブックを使っていただいた方から、子どもが楽しんでくれたというフィードバックを貰えたのが心の支えになり、自信を持って届けたいと思うようになりました。
楽しかったことは、英会話ブックの制作にあたって情報収集をする中で、子どもの発達心理学に関する知識が増えていくことを実感したことです。また、デザインや絵を描くことがすごく好きだったので、印刷して形になった時には達成感がありました。」

作品「One, Two, Three, English! おうちでできる英会話ブック」

「子ども達の夢を叶えるサポートがしたい。」作品づくりを通して明確に見えてきた想い

―作品づくりを通して、自分が成長したと感じる点についてお聞かせください

植竹さん「自分の中での変化としては、もともとひとつのものを作り上げるということが、あまり得意ではなかったのですが、作品を完成させるまでの期間、集中して取り組めたことです。どうしたら、子どもにとって良いものになるのかということを毎日のように考えていました。計画を立て、作品を作り、作ったものを人に評価して貰いブラッシュアップしながら妥協せずに取り組めたことが、自身の物事に向き合う姿勢や最後まで継続するという点において、成長できた点だと感じています。」

―作品について、今後の展望を教えていただけますか

植竹さん「まずは自分の周りから、このワークブックを広げていきたいなと思っています。その方法としては幼稚園にワークブックを置いて貰うことや、区役所に声をかけて、子どもと保護者を対象にしたワークショップを開催するなど行動していきたいと思います。できるのなら、区役所の方とワークブックを楽しんで貰える方法を一緒に探していけたらいいなと思います。そうして基盤ができた後に、より多くの地域にも広めていきたいと考えています。また、同時に専門家の方にもアプローチを行い、プロの視点からの評価をいただくことで、内容をどんどんブラッシュアップさせ、最終的には教材として世の中に届けたいと思っています。」

―最後に。植竹さんご自身の今後について、どのようなことを学んでいきたいとお考えでしょうか

植竹さん「私自身で言うと、アメリカの大学に行きたいと考え準備をしています。アメリカは、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーが学校や社会に整備され、子どもに対しての心理的なサポートが浸透している環境だと考えています。これまで私は日本で過ごしてきましたが、日本とは違う環境に身を置いて勉強することで、新しく気がつくことがあるのではないかと思います。また、大学では児童における発達心理学と、子ども達を取り巻くコミュニティの在り方を研究したいです。子どもの夢を大切にしたいという想いがあるので、色々な困難を乗り越えて、子ども達が夢を語り、夢を叶えられるようにサポートをしていきたい、そのために、子どもの発達心理学と、社会として子ども達とどう向き合うのか研究していきたいです。」

取材を終えて

お母様の運営される学習塾を手伝う中で、子ども達の成長を目の当たりにし、「教育の面白さ」について身を持って感じた植竹さん。将来、子ども達が広い世界を見ることができるよう、英語とコミュニケーション能力、この2つのスキルを幼少期から身につけて欲しいと英会話ブックの制作をスタートさせました。完成まで、毎日どうしたらもっと子ども達にとってよいものになるのか考え続けた真っすぐな想いと、ひとりで全ての過程を担い作品を完成させた実行力に、とても感銘を受けました。
「SDGs探究アワードへのエントリーがきっかけで、自身の学びたいこと、やりたいことが明確化し、人生の大きな転機になりました」と話してくれた植竹さんのさらなるご活躍をお祈りしております。

東京学芸大学附属国際中等教育学校 植竹スミさん 受賞作品