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SDGs探究AWARDS2023

SDGs探究AWARDS2019
受賞作品

学生部門優秀賞

次世代のプライマリ・ケア分野のリーダーを育成する為に、医学生が社会的処方を通じてプライマリ・ケアを学べる環境を作りたい
~プライマリ・ケアへの投資によるUHC達成~

Japan Students’ Healthcare Innovation Project 神戸大学・大阪大学・東京医科歯科大学

  • SDGs Goal. 3すべての人に健康と福祉を Target. 8全ての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。

日本では社会的処方が普及しておらず、健康に関わる社会的問題が解決されにくい現状がある。

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参考文献
西岡大輔,近藤尚己, 2018 社会的処方の事例と 効果に関する系統的レビュー ~普及に向けた課題整理~
Wass V. The Astana declaration 2018. Educ Prim Care. 2018;29(6):321.
World Health Organization, 2003 Social Determinants of Health: The Solid Facts
Mackenzie G, 2017: Healthy London Partnership p10
総務省統計局 平成29年9月27日 国勢調査 世帯構造等基本集計結果 p5
Aoki T, Yamamoto Y, Ikenoue T, et al. Social Isolation and Patient Experience in Older Adults. Ann Fam Med. 2018;16(5):393–398.
厚生労働省 平成29年度 国民医療費の概況
Rocque GB, Pisu M, Jackson BE, et al. Resource Use and Medicare Costs During Lay Navigation for Geriatric Patients With Cancer. JAMA Oncol. 2017;3(6):817–825.
“「新・家庭医療専門医」、世界標準を目指し本格稼働” 医療維新
“谷根千まちばの健康プロジェクト(まちけん)”
西 智弘 2020 「社会的処方 孤立という病を地域のつながりで治す方法」

日本では社会的処方が普及していない。社会的処方とは、家庭医などのプライマリ・ケア専門医が、社会的健康問題を指摘された患者に対し、社会資源を紹介することである。
日本でも社会的孤立を始めとした社会的健康問題は一定割合存在している。医療費の増加も懸念される中、費用対効果や健康への影響が示されている社会的処方の普及は急務である。しかし国内には社会的処方の主たる担い手である家庭医は少なく、進路を希望する医学生も少ない。教育現場の大学病院がプライマリ・ケアの実践場所でないことが原因の1つであると考えられる。
そこで我々は、社会的処方を先駆的に実践する家庭医と共に、医学生が社会的処方の実践を通じてプライマリ・ケアを学び、魅力を感じられる環境を作りたいと動き出した。
プロジェクトを率いるのは、家庭医の学会(JPCA)の膝下で本分野に関心ある若者達を長く率いてきた山地翔太(現 JPCA夏期セミナー副実行委員長)である。

受賞者からのコメント

はじめに、今回このように大変素晴らしい場で、最高の評価を頂けたことに心より感謝しております。本企画に携わる全てのスタッフの方々に厚く御礼申し上げます。私たち若者が輝ける場を用意し、手を差し伸べ、背中を押してくださる大人の方々がいらっしゃるからこそ、私達は前を向き続けることができます。
私は、人と過ごす時間に価値を感じ、価値を「誰」と共有するか、そこに幸せを感じます。「ご飯は誰かと一緒に食べるから美味しいのよ」これは私が幼い頃に母がよく言っていた台詞です。他にも母は私に「当たり前の幸せ」をたくさん教えてくれました。 家庭医を目指す私の原点はそこにあるのかもしれません。誰かの当たり前の幸せを守れる家庭医という「生き方」を通じて、私は幸せな人生を歩みたいです。
ある時、私は1つの事実に気がつきました。当たり前だと思っている幸せは、実は当たり前ではないこと。油断すると、あるいはどれだけ備えても、当たり前の幸せは突然消えてしまうことがあること。私は酷く焦り、そして考え、行動を始めました。目の前の患者、地域住民、全国民、世界中の人々、そして誰より自分とその家族を守る為には、備え続ければならない。目の前の幸せを目一杯感じながら、その幸せを分け合い、そして守る為に全力で生き切る。そんな人生だったと思って死にたい。目の前の患者や地域住民に降りかかる身近な問題から最上流の問題まで解決しようとする家庭医の専門性は僕の生き方に合っていました。
そして、学生の私だからこそ今できること、それがJ-SHIPでした。プライマリ・ケアも家庭医も誰も知らない。それでも日本がこの危機的状況を乗り越える為には、家庭医がどうしても必要だという思いが確信に変わるにつれ、私の行動力は加速しました。仲間が必要だ。一人でも多くの若者に家庭医という生き方を知って欲しい。自分の自由と幸せがあって、守りたい人と地域があってこその家庭医です。皆さんも、そんな幸せや地域に触れる体験を通して、一緒に家庭医の魅力を感じてみませんか?

Japan Students’ Healthcare Innovation Project山地 翔太
毛利 公亮
飯村 可菜神戸大学・大阪大学・東京医科歯科大学

審査員からのコメント

日本において社会的処方の普及が急務である一方、その主たる担い手の家庭医は少なく、進路を希望する医学生も少ないことを問題点とし、その原因の一つとして教育現場の大学病院がプライマリ・ケアの実践場所でないことを挙げている。
医大生自らが社会的処方の実践を通じたプライマリ・ケアを学び、魅力を感じられる環境を作りたいと動き出し、今後の展望も示されている点から、自分ごと化が明確であることを評価した。