竹富町立波照間中学校
寺尾紬さん
大好きな海への恩返しのため始めたビーチクリーン活動
竹富町立波照間中学校 寺尾紬さんは、大好きな海へ恩返しをするために始めたビーチクリーン活動についてまとめた「紬の海洋ゴミ日記1」でSDGs探究AWARDS2021(以下、アワード)中高生部門・最優秀賞を受賞されました。海に漂着した大量のゴミ問題について自身で探究し、アクションに移していく中で周囲の協力を得ながら目標達成に向け真摯に取り組む姿が、審査員の胸を打ち満場一致で最優秀賞となりました。今回は、寺尾紬さんご本人にビーチクリーン活動への取り組みの動機や、現在の様子、今後の目標についてお伺いしました。
大好きな海へ恩返しがしたい。
波照間の海を守るため決意したビーチクリーン活動
―ビーチクリーン活動に取り組もうと思われたきっかけは、何ですか?
僕は幼い頃から、海で泳いだり魚を捕ったりすることが本当に好きでした。だから、自分で作ったハリセンボンの剥製やサメの歯だったりラクダ貝など、こういう宝物が僕には沢山あります。海には本当に感謝しています。だけど、今年の夏、海ガメの研究をしようかなって思って浜に行ったら浜がすごく汚れていて。これじゃ海ガメが産卵できないなと思いました。波照間の海を守りたい、そして、今こそ僕の大好きな海に恩返ししたいと思って。それで、母と相談し夏休みの間に毎日、浜のビーチクリーン活動をすることに決めました。
―自然にあるものだから、あって当たり前じゃなくてそこに感謝するということが素晴らしいですね。
クリーン活動をされてみて、感じたことはありますか?
僕が夏休みビーチクリーンをしていた浜は、日本最南端にあるペムチ浜という所なんですけど。一歩、歩いたらゴミみたいな感じで大量のゴミが広がっていました。ゴミは、ほぼプラスチックなんですが、本当に夏休み頑張って毎日拾ったから、今はそんななくて。毎日、ゴミが減っていっているのを感じるのは、すごく嬉しかったです。ビーチクリーン活動をした中で特に感じたのは、この海の現状を皆さんに知って欲しいということです。人間が便利なものに頼って、物を大量生産し、そしてそのゴミで海が汚染されていっている。まずは、そのことを知って欲しいと思いました。
ビーチクリーン活動を始め、活動を発信していく中で生まれた人との繋がり
―ビーチクリーン活動を行い、それを発信していく中で、感じた変化はありますか?
ビーチクリーン活動を行っていく中で、活動の内容をインスタグラムで発信していたんです。そのインスタグラムが縁で、鳥取県のニコクラフトというマイクロプラスチックをかわいいキーホルダーにする活動をしている中1の女の子とお父さんがいるのですが、その方々と出会い、波照間島でワークショップを開催して貰い、キーホルダーの作り方を教えてもらいました。また、昨年10月に僕がビーチクリーンしていた浜にクジラが打ち上がりました。死因が海洋ごみではないか解剖して確かめたいと思ったのですが、埋めるしかないと言われました。インスタグラムを見てこの事を知った、石垣島でサンゴの保全活動をしているユニスクさんが、国立科学博物館の先生に連絡してくれて、先生の指導の元、クジラの計測や細胞の採取をユニスクさんと一緒にさせてもらいました。腐敗が進み、結局、解剖はできなかったのですが、ユニスクさんと出会う事ができ、今でもサンゴや自然の色々な事を教わっています。自分が尊敬できる人に出会えたのがうれしかったです。クジラがくれた縁を大切にして、クジラが伝えたかったメーセージはなんだったのか考え続けたいと思っています。最近ではサンゴの調査方法もユニスクさんに教わって自分で表にまとめたりもしています。僕は、ニシ浜でしか泳いで無かったんですが、サンゴの大規模白化でほとんどのサンゴが死んじゃったと思っていたんですが、調査の結果、実際には他の浜では結構残っていて、安心しました。また、アワードを受賞したことで、新聞など色々なメディアで活動を取り上げていただき、僕の活動が広く知られるようになりました。そういう影響があってか、インスタグラムに色んな人が応援メッセージをくれるようになって。それも本当に嬉しいです。
―受賞が一つのきっかけになったんですね。ところで、活動を「日記」という形でまとめたのは、なぜですか?
日記という形を取ったのは、この活動が僕にとって後々の良い思い出になるんじゃないかと思ったからです。毎日毎日、海は違う顔を見せてくれるのでそれをどんどん記録していきたいなと。好きだからこそ思い出に残しておきたいという想いが強くて。あと、皆に知って貰うために発信していきたいという想いもあって日記にしました。
―今後の活動目標について聞かせてください。
今回、僕たちが拾ったゴミのうちペットボトルは、協力をしていただいているアパレル企業に送って繊維にしてもらって、バックとかポーチとか洋服にしてリサイクルをして貰う予定なんですよ。でも、他のごみは石垣島の最終処分場で埋め立てられるということを知って。すごくショックでした。それだとゴミを移動させただけになってしまうんじゃないかって。だから、僕のこれから目標は、自分達の拾ったゴミを将来的には全部リサイクルすることです。
―なるほど。最後まできちんとリサイクルできればとても素敵ですね。
ちょっと早いですが、将来はどういう仕事がしたいとか目標はありますか?
将来的には、やっぱり海に関わる仕事がしたいと思います。海が本当に純粋に大好きなんで。その為にも、海の勉強が沢山できるように、大学は海洋学部のあるとこに進学したいなと思っています。僕は理系の勉強が好きなので、生物や科学の勉強をがんばって、海に恩返しができるようにがんばりたいと思っています。
取材を終えて
今回はオンラインでの取材となりましたが、画面越しにも寺尾さんの海が大好きで、海に多大な感謝を寄せ、そして海に恩返ししたいんだという素直で強いその想いを感じることができました。
これから先、「海に関わる仕事がしたい!」と言ってくれた中学2年生の寺尾さんが、高校生になり大学生になり大人になった時にどのようなことを成し遂げてくれるのか、その未来が本当に楽しみで、ワクワクさせられました。