
株式会社 建設システム
【KENTEM】
SDGs探究AWARDS2021より協賛いただいている株式会社 建設システム【KENTEM】の重森社長、中村さんに会社設立の背景やSDGsへの取り組みなどについてお話を聞く機会をいただきました。
ITの力で誰もが安心して暮らせる
「リスクゼロ社会」へ
株式会社 建設システム(KENTEM)は、建設業界をITの力で支える業界トップシェアのIT企業。
建設業の複雑な現場を安全、効率的に、そして過酷な労働環境を改善するためにさまざまなシ-ンに応じたソフトウェアの開発・販売を行っておられます。
また、社会貢献活動を積極的に実施されており、様々な形でSDGs達成に向け取り組んでおられます。

代表取締役 重森 渉
静岡県出身。短大卒業後、ソフト開発会社に入社。
28歳のとき、創業期の建設システムに営業として入社し、全国の営業所開設に尽力。
営業統括を経て、事業開発および新規部門の立ち上げの指揮を取り、専務へ。
2018年9月、代表取締役に就任。現在に至る。
登山が趣味であり、富士山への登頂も何度も経験している。

経営企画部 ブランディング推進課 中村 麻衣亜
長崎県出身。大学卒業後、KENTEMへ開発部として入社。
5年間主力商品の開発に携わる。
2020年7月より現在のブランディング推進課に配属。
主に教育現場に対するSDGs活動に取り組んでいる。
ITの力で建設業の働き方に変革を
―御社の設立の背景や事業内容についてお聞かせください
重森社長
「私たち建設システムは、1988年に創業した建設業向けに施工管理システムを開発販売している会社です。創業者である先代の栗田は、会社創業まで建設会社に勤めていました。 当時の建設業における労働環境は大変厳しく、昼間は現場、そして夕方からは1日の作業を書類に取りまとめ次の日の段取りの準備をするなど、仕事が毎日深夜1時、2時にまで及ぶことが当たり前だったそうです。特に土木工事の現場は、国民の税金を使った公共事業がメインです。そのため管理がとても厳しく、必要な事務書類も複雑で膨大なものでした。このままでは建設業で働く人が家族と過ごす時間も満足にとれず幸せに暮らせない、国を作っていく大切な仕事にも関わらず、未来の担い手がいなくなってしまうと強い危機感を感じたそうです。当時は事務仕事もほとんどが手書きで、パソコンが一般に普及する前でしたが、そんな中、コンピューターゲームで遊ぶ子供たちを目の当たりにし、必ずITの時代が来ると確信し、建設現場の労働負荷をITの力で解消できないかと会社を創業するにいたりました。 そこから様々なシステムを開発し、全国の現場で当社のシステムを導入していただいています。今はDXの時代といわれ、建設業界でもIT化が進んできていますが、今後さらにその動きが強まってくると考えています。」

―ビジョンである「リスクゼロ社会へ」についてお聞かせください
重森社長
「建設現場の負担解消を実現すべく創業し、その後順調に会社を拡大させていくことができました。そうした会社の発展にあわせて、IT企業として、より社会に貢献していくためにどのようなことが必要かについて考えるようになり、私たちが目指すべき「ビジョン」を新たに策定する運びになりました。
ビジョン策定は若手社員も含め11名のプロジェクトチームで策定しました。それが私たちのビジョン「リスクゼロ社会へ」です。策定までには1年半議論を重ね、11名全員の一致で決めました。リスクは何を指すか人によって異なると思います。私なんかの場合ですと、それは災害であったり、ほかの人にとったら高齢化社会による車の運転事故(アクセルとブレ-キの踏み間違いなど)を連想する人もいるでしょう。
ただ、私たちがビジョンとして目指す「リスクゼロ社会」とは、工事現場での怪我や死亡事故を起こさないようにすることは元より、風水害や地震などの天災や事故などの人災にいたるまで、さまざまなリスクがあらかじめ想定され、そのための対策が施されている社会のことをいいます。
ここ数年「100年に一度の●●」といったような大規模災害が続いている状況ですが、それらを私たちが創業当時から培ってきたITの力やノウハウを活かし、これらのリスクを限りなくゼロにできないかという想いが込められています。また、「ゼロ」とあえて謳ったのは、1割や2割のリスクを減らすという出来そうな目標を掲げているだけでは、それはビジョンとはいえない。極端ではあるけれども「リスクゼロ」を目指そうといった私たちの強い決意の表れです。このビジョンをもとに、本業に加え、様々な社会貢献活動を積極的に取り組んでいます。」

SDGs達成に向けて私たちができること
―SDGsに積極的に取り組まれていますが、どのような想いがおありですか?
重森社長
「当社は積極的に社会貢献活動を実施していますが、事業を営む会社としてSDGsへ貢献していくことは当然の責務だと考えています。実は数年前まであまりSDGsを意識していなかったのですが、教育現場などで子供たちがSDGs達成に向けていろいろな取り組みをしているのを見る機会がありました。その子供たちが本当に生き生きとしていて、これからの未来に向けて自分たちでできることを真剣に考えていました。それをみて私たち大人も子たちに恥じない活動をしないといけないなと思ったことが、SDGsへの貢献を意識しだした大きな要因ですね。
今では、SDGs目標11番の住み続けられるまちづくりや、4番の教育分野をはじめ、福祉・健康分野や女性活躍の分野など様々なSDGs目標の達成に貢献できる活動を行っています。こうした社会貢献活動、SDGsへの取り組みを始めてから、社員の士気も高まったように思います。
「いい会社になってきましたね!」と嬉しそうに話す社員も沢山います。さらに採用活動においても、KENTEMの考え方やスタンスを理解してくれる方が増え、とてもいい影響が出てきていると感じます。」

―具体的にはどのような取り組みをされておられますか?
中村さん
「例えば弊社では、シヅクリプロジェクトという静岡県の豊かな未来の創造を目的に、静岡県内の中高生と地域社会をつなげる新しいコミュニティに参画しています。
このプロジェクトでは地域に潜む問題を子供たちが発見し、どのようにして解決できるかを企業のリソースを通して考えます。地域を構成する重要な立場である「子供」、「地域住民」、「学校の教員」が連携し、未来の地域づくりを担う次世代の人材が持続的に育ち続けるコミュニティ作りを目指しており、私たちは、そのプログラム参加企業として活動しています。
これは、人材育成という面からSDGs11番、住み続けられるまちづくりをへの貢献や、4番、質の高い教育をみんなにに寄与する活動だと考えています。
また社内活動としまして、全ての社員がその能力を十分に発揮できるように、仕事と子育てを両立させる事が出来る職場環境の整備に努めていたり、残業の削減、分煙化、リフレッシュタイムなど、様々な取り組みを実施し、働き甲斐も経済成長も実現できる職場環境に努めています。」

IT企業として、人材育成で社会に貢献する
―御社では子供たちの人材育成に力を入れておられますね。
重森社長
「これからの社会において、ITを活用する力は誰もが持つ必要がある力であることは明らかです。現在教育現場でもGIGAスクール構想としてPCやタブレットを配布し、ITツールを活用した学びが広がってきています。そのような中で、私たちIT企業が人材育成という面で貢献できることはたくさんあると思っています。
例えば、静岡大学教育学部の塩田准教授との共同研究で開発した、オンライン教材「スク-ルエンジニア検定/エンサップ」。これは、IT企業として未来を担うエンジニアを育てることで社会に貢献したいという想いから、縁あって共同研究、開発が実現しました。
エンサップは、ITの基礎知識をはじめ、端末を使用している際に発生するトラブルにどう対応するべきか等を動画やテキストを通して学習することができます。
実はエンサップが出来たときに私の娘もやってみたのですが、とても楽しそうに前のめりで勉強していました。この反応なら多くの若者にエンサップを通じて情報を活用する力を広めていけると考え、現在積極的な展開を進めています。エンサップという教材を用いて未来のエンジニアたちを育てていく。そのことで社会への恩返しになると考えています。」

―他に取り組んでおられることはありますか?
中村さん
「他には、地域の子供たちに向け、教育現場への情報モラルやリテラシーに関する出前授業も行っています。直接学校にお伺いし、対面での授業を行ったり、コロナ禍においては、オンラインにて授業を行い、ネットトラブルのリスクから守るためIT知識や情報リテラシ-についての学びを提供しています。
GIGAスクール構想やコロナの影響で、教育現場では一気にITツールの導入が進みましたが、生徒の皆さんはもちろんのこと、先生方も情報の取り扱い方や起こりうるリスクやトラブルなどを正しく理解している方はまだまだ少ない状況で、どう生徒たちに指導をしていけばよいか手探りの状況だと感じています。
そこで私たちは、IT企業という立場から実際に社会でどのようにITや情報機器を活用しているのか、また正しく活用するためにどんなことに気をつける必要があるかなどを生徒の皆さんや教員の皆さんにお伝えしています。
現在は地元静岡の学校での活動が多いですが、今後は全国の教育現場へ、こういった活動を展開し、IT企業として人材育成に貢献していきたいと考えています。」

未来を担う若者の皆さんへ
―最後に、これからの未来を担う若者にエ-ルをお願いします
重森社長
「これからの時代は答えがない時代だと言われています。その分色々なことに柔軟にチャレンジでき、自分で考えることのできる人材が重宝されると考えています。急速なIT技術の発展にともない、今時代は大きく変わろうとしています。そういう変化を的確に捉えて、社会に対して自分は何ができるかを考え、そして実行できる人がどこでも通用するし、これからの社会において一番強いんだと思います。 ただ、人にはそれぞれ向き不向きがあります。なので無理して「理想の人材」になろうとしなくてもいいと私は思います。まずはさまざまなことにチャレンジして、ぜひ自分の向き、不向きをどんどん発見していってください。誰にも負けない技術をもっている人は、とことんそれを追及していけばいい。 社会はそういった一人ひとりの資質をきちんと認め、評価してあげることが大事だと私は思っています。特に我々のようなITの会社にはそういう考え方が必要です。ぜひ自分の向き、不向きを発見できたなら、そこから誰にも負けない自分だけの能力を磨き上げて欲しい。その能力を持って、どう社会に貢献するのかを考え、実行できる人になってください。」
