SDGs探究Library

SDGs探究AWARDS2023

麗澤中学・高等学校
SDGs研究会(EARTH)
レモネードスタンドから始まった持続可能な部活動

麗澤中学・高等学校のSDGsをテーマとした部活動『SDGs研究会(EARTH)』(以下、研究会)は、SDGs探究AWARDS 2020(以下、アワード) 中高生部門で優秀賞を受賞されました。受賞を受け、新聞からの取材を受けたり、市長表敬をされたり、周辺地域でも注目される部活動へと進化を続けています。受賞から半年ほど経ち、高校1年生になった坂野慶太さん、石井美羽さん、佐久間康太さん(参加時中学3年生)、部活動の指導にあたられている瀧村尚也先生にお話しを伺いました。

麗澤中学・高等学校 SDGs研究会(EARTH)

部活動として取り組むSDGs
さまざまな学年の生徒が協働し、社会で役立つ視点を育む

―SDGs研究会はどのような活動をされていますか?

佐久間さん「もともとこの研究会は数人の生徒たちの有志団体によるレモネードスタンドから始めたもので、レモネードを売って得た収益を小児がん支援団体に寄付するという活動です。2018年くらいから活動に参加したいという生徒が増えて、それなら部活でもっと幅広い活動をしようということで去年から部活動になりました。いまは中高合わせて60人くらいいる大きな部活になって、10個もの企画を進めています。自分たちの興味関心があることを起点としていて、中高合同でチームを作り取り組んでいます。企画毎のリーダー、メディア広報、経理、といった役割分担をしっかり立てて活動しています。」

麗澤中学・高等学校 佐久間さん

瀧村先生「この部活動の特徴としては学校から一切お金をいただいていなくて、自分たちの収益だけで活動を続けているところにあります。生徒たちの疑問から始まったんですけど、レモネードスタンドの寄付活動に関して、募金するにしても実際は原価代を差し引いた額になる、と大人は考えますよね。それをどうにか全額募金できないかと。生徒たちは純粋な心で、いただいたお金は全額募金にならなきゃおかしいでしょ、って。それは彼らの年代ならでは発想される純粋な考え方の素晴らしさだと思うんです。じゃあそれを可能にするために、何かしら自分たちで収益を得るものを作りましょうということで、フェアトレードコーヒー販売が始まったんです。」

麗澤中学・高等学校 瀧村先生、坂野さん、石井さん、佐久間さん

―SDGs研究会ならではの取り組みですね。
では、部活動としてどういったことを大切にされていますか?

瀧村先生「こういう活動って個人でもやろうと思えばできるんですよね。むしろ一人でやった方が早いんですよ。ただ、仲間と一緒に時間をかけて進めていくことによって、いろんなアイデアが浮かんだり、悩みを共有したり。研究会では仲間と協働する難しさを肌で感じることができるのが大きいと思います。下の学年のメンバーをどうやって自分たちの企画に参加させて、上手く作業をまわしていくかとか。会議なんかも当日に話し合うんじゃなくて事前に話し合った上で行って円滑に進めようとか、会社の様に組織運営しているので、そういったところも生徒たちはたくさん勉強してくれています。学校教育はお金の部分をあまり見せないし、社会のリアルな組織っていうのをあまり伝えずに子供たちを社会へ出してしまう。私はそれは少し違うんじゃないかなと感じていまして。まずはこの自分たちの研究会から変えていければ良いなと考え取り組んでいます。」

―先生が指導にあたって意識されていることを教えてください

瀧村先生「生徒から学ぶことがたくさんあるなと日々思います。もちろん生徒たちはつまずくことも多々あります。こういう探究活動というのは答えがない以上、私もこれが正解だって言えないですし、言うつもりもありません。生徒たちがやりたいと思ったことをできるだけ潰さないように、まずやらせる。自分たちでやってみた結果、じゃあこっちの方が良いねって行き着いたものが、ある意味正解だと思うんです。良い悪いっていうのは誰にもわからないですけど、少なくとも生徒たちがこの研究会の環境下で充実して活動しているのであれば、私は大成功だなって思いますし、生徒たちが失敗も経験しつつ次に繋げられるのは、この研究会の強みでもあるかなと思います。」

麗澤中学・高等学校 瀧村先生

SDGsってなんだろう、先輩たちってどんな事をしているんだろう
調べて深め、変わるきっかけとなったSDGs探究AWARDS

―アワードにエントリーしたきっかけを教えてください

瀧村先生「作品の動画の中でも紹介したレモネードスタンドやフェアトレードコーヒー販売の活動は、研究会としてこれまでずっと行ってきたものです。この3人もすごく興味を持ってくれて、入部前にも活動に加わっていました。ですがまだ研究会のことをよくわかっていないというのもありまして、研究会のことを知ってもらいつつ、SDGsってどういうものか探究してもらう方法は何かないかなと考えた結果、このAWARDSにこれまでの取り組みをまとめてエントリーをするにいたりました。先輩たちにインタビューをして話を聞いたり、今までの活動の写真やデータを集約したり、その過程で研究会の活動の面白さ・深さっていうのを理解してもらえたら良いなと思ったんです。」

―作品を作る上で工夫したことを教えてください

坂野さん「今までなかなかこういった活動について知る機会が無くて。改めて先輩方の活躍や今まで大変だったこと、貧困地域の現状などを学んで、それをいかに相手にわかりやすく、そして興味を持ってもらえるようするかが一番重要だったかなと思ってて。動画を作ったことはなかったけど、やっぱり動画は伝わりやすい方法だし、伝えられる方法もいっぱいあると思ったから。相手への伝わりやすさをすごく考えました。」

麗澤中学・高等学校 坂野さん

石井さん「私は動画のナレーションを担当したんですけど、すごく責任を感じました。画面だけじゃなくて音を聞いてはじめて伝わる人もいると思うので。全部の場面が大事ですけど、その中でもデータの数字とか場所とか固有名詞はちゃんと綺麗に聞こえるように。ひとつの文に3、4テイク撮って、その中でどれが良いか聞き比べて作っていきました。」

麗澤中学・高等学校 石井さん

―振り返ってみて、どんな力・視野が身についたと思いますか?

石井さん「アワードの受賞式での他の学校の方との交流や、他の受賞作品を見て『こういうのもあるんだ』っていろんなことを知ることができたのがすごく良かったです。質問をしていろんなヒントをもらって、うちの学校でも取り入れたいなって考えています。それから受賞したことで、いろんな方に取材をしていただいたんですけど、いままでそういった経験はほとんど無くて。聞かれたことに答えるっていう簡単なことだけど、すごく緊張して上手くできませんでした。でも少しずつ慣れてきて、自分の考えを自分で語れるようになってきたかなと思います。」

―自分の中で変化を感じたことはありますか?

坂野さん「いままでは周りにやれって言われたからやる、みたいなことが多くて。でも研究会での活動を経て、自分で将来役に立つだろうなって思うことを、自らやってみようってチャレンジする心を持つようになったのが大きいと思います。自分は数学が苦手というか嫌いだったんです。できないのにやれって言われるのが苦痛で。でも最近は、この考え方って日常でも使えるんだなとか、気づきっていうのがすごく増えている気がします。だから大学に行ってもっと深い研究をしてみたい、まずは苦手意識を持っている教科も含めてどの教科も一回頑張ってみようと思ってます。」

部活動から学校全体へ、そして日本全国へ広げたい

―学校全体でのSDGsへの取り組みも広がっているそうですね

瀧村先生「中学校の総合学習の時間で、いままでやっていたものを今度はSDGsという観点から見てみようという授業を実施しました。SDGsって内容自体は新しいことではないので、ある種のフィルターを通して社会の課題がどういう風に見えてくるか、というものです。もともと麗澤ではフィールドワーク、自然について学ぶ授業も沢山ありまして、そこにSDGsのエッセンスを少しずつ入れていくといったプログラムを行いました。
それから今度実施する企画として、SDGs研究会で東ティモールを支援している縁もあって、そこの大使に実際に学校に来ていただいて講演を予定していて、生徒たちも大使に向けて英語でプレゼンテーションを行うといったプログラムを予定しています。SDGs研究会という小さなところから始まったものなんですけど、生徒や先生方の意識の変化が、少しずつ学校全体に広がっていると感じています。」

―今後の活動目標を教えてください。まずは各企画について、生徒の皆さんいかがですか?

佐久間さん「私は数ある企画の中のレモネードスタンドの企画に参加しています。レモネードスタンドは小児がんの治療を支援するもので、治療で改善している子どもは増えています。でもその後の生活にも支援が必要だと思います。後遺症が残ったり、髪の毛が抜けてしまうとか。そこで新たにヘアドネーションの普及も加えて、啓発をしていきたいなと思っています。」

坂野さん「敷地内に併設している幼稚園との企画を考えています。もともとは幼稚園児向けの絵本を作ってみたかったんですけど、SDGsを言葉で理解するのは幼稚園児にはまだ難しいだろうって、幼稚園の先生に企画のプレゼンテーションをした時に教えてもらいました。だからアクティブに活動できる場を作れたら良いなって。一緒にゴミ拾いをして分類して、それが環境問題にどう関わっているのかを伝えるとか、スタンプラリーとか。自分の手と足を使って実感が湧くものの方が、子供たちが学ぶものが大きくて理解もしてもらいやすいと学んだので、いまはその企画を進めています。」

石井さん「私はカードゲームを作っています。SDGsの問題とその解決策で対になるものを作って、対戦式のゲームで、と想定していたんですけど、文化祭で試してみたらルールが複雑っていう意見が出て。神経衰弱みたいに誰でもルールを知っているものに置き換えられるんじゃないかっていうのをいま考えてます。それからやっぱりカードゲームを作るには製作費が必要なので、世の中に発信することでいつかそこから収入が得られるようになったら持続可能なものになるんじゃないかって。この企画が本当に楽しいので、卒業して大人になっても仲間と活動を続けたいなと思っています。」

麗澤中学・高等学校 坂野さん、石井さん、佐久間さん

―生徒の皆さんとても意欲的に活動続けていますね。では、部活動全体の活動目標を教えてください。

瀧村先生「生徒たちが汗をかいて作り出したもの・想いをどう次の世代に繋いでいくかを大事にしたいと思っています。部活動だからこそ縦の社会がありますよね。いま最上級生の高校2年生が引継ぎを積極的に行ってくれていているんですけど、それをさらに次の世代にって繋いでいくことが持続可能な活動なんじゃないかなと。まずはその確立を研究会全体のひとつの目標としています。もうひとつは外部に活動をPRしていくことです。世界や日本を変えていくためには、こういった活動を全国に普及する必要があると思ってまして。人とお金が無い状態でも、こういった活動ができるっていうことを広めたいんですよね。これはどうやってやったらいいんだろうっていうのを私たちから小中学校・高校へレクチャーしに行ったり。そういう学校教育の繋がりができて、『SDGs研究会の仲間たち』みたいなグループが日本全国にできれば、もっとこういう体験をできる子が増えるんじゃないかって思っていて。私はそこを最終目標として頑張りたいなと思っています。」

取材を終えて

今回はオンラインでの取材となりましたが、画面越しでも活動への熱い意気込みが伝わってきました。ぜひアピールしたいことは?とお聞きすると、「今回お話しした以外にもたくさんの魅力ある企画があるので、もっと紹介したいです!」と研究会の皆さんへの想いを伝えてくれた石井さん。「アワードに提出した動画は、本当にパソコン操作も何もわからない状態からだったので、やろうと思ったら一歩踏み出せることを伝えたいです!」と坂野さん。そしてSDGs研究会ではフェアトレードコーヒーのオンラインショップを運営中で、第3弾となるドリップパックのセットが販売開始されたとの事。「全校生徒にフェアトレードの紹介をした上で、パッケージデザインを公募しました。みんなで作り上げた物なので、ぜひ注目してください。」と想いのこもった素敵なPRを佐久間さんからいただきました。これからのSDGs研究会の活動にたくさんの期待を込めるとともに、私たちのアワードがその活動の一助になれればと思います。

SDGs研究会(EARTH)の運営するオンラインショップ
EARTH(thebase.in)

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